甘みは塩で

やはり4000人の圧力はすごい。
ステージ上からは逆光で客席は見えない。
圧倒的な眼力の壁。
今日は八代さんと横浜パシフィコでのコンサート。
ワンインレッドの布で覆われた高級感漂うイスはすべて満席。
遠くから見えるようステージの脇には大きなモニターまで設置されていた。
久々の緊張感切迫感興奮ドキドキ。
声は確かに届いたはず、だって大切に歌ったもん。
最近歌を「愛しく」想うことが胸にある。
やっぱり生身の人間がやることだ「気持しだい」そうだろ?
打ち上げもかねてスタッフの方と寿司屋に行った。
「ふぁーふまい」
ほおばる口から幸せがこぼれる。
寿司は大の好物。
目を閉じ味が口に広がるのを確かめて飲み込む。
極上ならば首まで振る、まるでジャズを聴くオヤジのように。
「塩で食べてみな」
社長が勧めるなら間違いはない。
僕の目がドカッと開いた。
トロの甘みが何倍にも膨れ上がったのだ。
醤油じゃ味わえないこの感じ。
その後のネタの大半は塩でいったことは言うまでもない。
「今の若い者は・・と言う奴に限って大人のフリをしてる奴が多い」
話はいろいろ巡り現在の若者論が飛び交った。
電車の中席をゆずる者ゆずらぬ者、いつの世も悪い奴らだけではないと盛り上がる。
僕の場合を想った。
基本的に恥ずかしくて無言で立ち上がり違う車両に移動する。
しかし思った人と違う人がその席に座るパターンもなきにしもあらず。
「どうぞお座りください」
優しさをなぜ恥じるんだろう?
僕は寝たフリを何回もしたこともある。
胸の葛藤の末「絶対ゆずらないぞ」と変な強情を張ることもある。
こんな時だけ偽善者ぶる自分が許せないんだろう。
もっとシンプルになりたい。
人の目なんか気にせず優しくありたい。
ガリ素手でつまみながらそんなことを思った。
それにしても寿司うますぎ。
こんな時だけ大食い選手権、ごちそうさまでした。