色は深く

真夜中に目が覚めた。
冷凍庫にある肉まんを温めミッドナイトランチ。
大阪の八代さんのファンの方にプレゼントされたものだ。
まだぬくい布団に足を突っ込んでコタツ代わり。
ほおばりながら最近を振り返ってみた。
デビューからもう一年が過ぎてすっかり季節は冬。
それもすぐ春は目の前。
例えるなら雪の下の花。
誰にも知られていないけれど確実に歌は育っている。
春になると凛と咲き誇る名もなき花。
つねずね路上ライブの頃を思い出す。
人と人が出会う不思議の魅力にとりつかれた。
手と手を握るその温もりに溢れ来る感謝の気持。
見上げた空にはいつだって星が瞬いていた。
みんな目の前は暗闇なんだな。
寂しくて一人布団にもぐりこんで泣くんだな。
僕もそうだもん。
けど思うよ、だから寄り添うんだろって。
だから優しくなれるんだろって。
今でも心はいっしょだ、あの時のまま。
誰かに冗談でこんなこと言われたのを思い出す。
「慎ちゃんは初心に戻ってばっかりでいつ進むんだろ?笑」
もちろんジョークだったけど、その通りだよな。
けどなんだか違うんだ、戻ってきてばっかりだけど確実に色は濃くなってる。
進んだ距離じゃないんだ、それはキャンパスに染み込む水彩絵の具のよう。
初心と言う布地に染まる深い色。
僕は歌っていくんだろうな、ずっとずっと。
自分の歌好き魂には驚かされてばっかり。
だって未だにどんどん好きになってるんだもん。
「才能は本当にそれが好きかどうか」
上手い下手を越えた歌がうたいたいな。
競い合うような心じゃなくそっとそっと。
差し出す心でいつもいたい。
肉まんも食べ終わってお腹も落ち着いた。
また眠気がそろりそろり近づいてきた。
今日はまたライブだ、それも久々の対バン形式。
燃える。
あぁ早く歌いたいよ、ニヤニヤしちゃう。
「ありがとう」
そんな気持でいつも生きていたい。