空は青

リンゴを食う。
とにかくこの赤い果実に齧りつく。
一人暮らしになって一番重宝しているのは他でもないこれ。
「お!ギターのお兄ちゃん」
近所には活気のある商店街が朝から動いている。
その中でも八百屋のオヤジが僕は好きだ。
寒い日は「風邪ひかないでね」
暖かい日は「いい天気だね」
当たり前だけどこの会話が僕を笑顔にする。
レジでピっとやって「ありがとうございました」
なんだかお店って最近そんなイメージだ。
何でも買える夢の国もいいけれど、人情がある商店街もいい。
こないだリンゴを2つ八百屋で買った。
「これなんか美味しいよ」
指先で実を弾きながら食感のいいものを選んでくれた。
ギターを背負っている僕にいつもの口癖「今日仕事?」
はにかみながら答える僕はギターケースの脇ポケットにリンゴを入れた。
「あーリンゴも幸せだなぁ」
八百屋のオヤジのその一言が僕の空を青くする。
毎日はアップサイドダウン、気がめいる時もある。
けど何気ない言葉や優しさがその日一日を元気にするときがある。
あれいらい僕の中で密かなマイブームなのだ。
「ギターの修理おわりましたよ」
ギター屋さんに立ち寄り、新品のように磨き上げられたマイギター眺める。
「うわーギターもしあわせだなぁ」
青い空、白い雲がゆっくりと流れた。