チューリップの花言葉

今もまぶたの裏でまぶしいチューリップ。
控え室に突然現れた三人娘は何にも変えがたいプレゼントだった。
富山県に初のライブ、ショッピングモールでのラジオイベント。
昼過ぎのカンカン照りの中到着した僕達はクーラーのきくその部屋に飛び込んだ。
ライブは3時から、サウンドチェックよーし、声の調子よーし。
2時間余りある休息時間ギター片手にぽろぽろと。
マネージャーやスタッフと笑い話をしている時だった。
ドアを開けた三人の赤。
「失礼しまーす」
そこには絶世の美女軍団。
なんと富山県のミス・チューリップの方々だったのだ。
突然のハプニングに男性軍沈黙&口開きっぱなし。
赤のワンピース(と言えばいいのか)に身を包んだ三人は恥ずかしそうに居場所を探していた。
今日のラジオイベントで共に出演する為、控え室が一緒だと言う。
粋な計らいをしてくれるじゃないか。
男性軍駆ける&椅子用意する&「さぁさぁ」と言う。
美人を目の前にすると緊張してしまう僕はどうにか突破口を探すように彼女らを見つめた。
まずトイレに行くことにした。
「今日のライブ頑張っちゃうどー」
独り言をぶつくさ言いながら控え室に戻る。
扉を開けたとたん僕の視界に広がっている異様な光景。
なんともうすでに男性陣&チューリップ名刺交換タイム!。
「くそっ先を越されたか・・」
しぶしぶ僕も頭を掻きながら名刺を頂く。
きっちりプリントされているチューリップの花畑の写真。
後から知ったがピンクのチューリップの花言葉は「愛の告白」だという。
なんともロマンチッカーな僕にはぴったりの花言葉ではないか。
名刺上ですでに愛の告白を受けてしまった男性陣はもうメロメロ。
今日のライブは気合が入りすぎたものになったのは言うまでもない。
その後富山県はなぜか美人出没度が高いことを知る。
夕方のラジオ番組に出演したときのこと。
「お待ちしてましたー♪」
笑顔のかわいい女性アナウンサー登場。
またまた「ウォー!」と心の中で湧く男性陣。
なんとそのアナウンサー、僕より一つ年下&フォークソングが大好きだという。
「なんじゃーっ」
ビックリしたことに彼女はカラオケに行って友達の前で加川良さんの「教訓」を歌ったらしい。
(知る人ぞ知るフォークの名曲・・普通女性がカラオケで歌わない)
笑顔でフォークの良さを語る彼女に僕は驚きと興奮を隠せなかった。
初めてだったのだ、同年代の女性とフォークソングについて語ったのは。
「古臭い」や「説教くさい」など偏見だけで追いやられているフォーク。
最近になりようやく取り戻し始めたがまだ「懐メロ」扱いされるスタンダード達。
今に通づる音楽のルーツや互いのフォークへの想いを語った。
「朝一番に『22才の別れ』を聴くのが日課です」
彼女からの爆弾クラスの発言に度肝を抜かれ僕は圧倒されてばかりだった。
「またぜひいらしてください」
手を振る彼女を背にタクシーは遠ざかる。
同姓ともこんなに熱く語ったことのないフォークへの想い。
自分の父親世代のムーブメントを僕達が語り合うことに違和感は隠せないけれど確かな熱を感じた。
おっとそれよりも富山県、美人が多い。
たった一日、偶然にしても僕をそう思わせるに値する出会い達。
ぜひまた富山にコンサートで行きたいと思う。
チューリップ入りの名刺を持って。