夏の憧れ

「あれから一年か・・」
隣で花火を見上げるスタッフは去年は出会っていなかった。
一人ぼっちで見上げてた去年。
「来年は誰と見るんだろうね?」
たたら祭りでの野外コンサート。
夕凪が心地よく吹くころ僕達のステージは始まった。
毎年このステージには大物ゲストが呼ばれ、川口市民の期待が集まる。
夏の憧れ。
いつからか「夢」は「目標」に変わり僕は今そのステージに立っている。
最後のアンコールで「見上げてごらん夜の星を」を歌った。
ステージ前ではあの日の少年が確かに聴いててくれた。
何のために歌ってるのかわからなくなる時がある。
何のために生きてるのかわからなくなる時がある。
けど嘘だけはつきたくない。
他人にじゃなくあの日の少年に。
ステージを下り暗闇の中仲間達と抱き合う。
いいステージだったのか?
まだまだダメなところが沢山ある。
けどまだまだ成長できるってことだ。
花火は上がる、宇宙の孤独を照らして。
なんだか今年は前向きに考えられそうだ。
「いいじゃないか一瞬でも照らすことができるなら・・」
本当に来年はどんな場所で花火を見上げるのだろう?
夏の憧れはまだ始まったばかりだ。