心の風鈴

音のない暮らし。
ヘッドフォンで塞いでた心の耳。
知識としての音楽を放棄。
一日中、風と話をしてた。
隣近所から聞こえてくる話し声や車の音。
洗濯物が揺れている。
今日は一日休みだった。
1人暮らしを初めてはじめて音楽を放棄してみた。
毎日耳に差し込んだヘッドフォンから流れていたメロディー。
この洪水の中で音の愛しさを忘れていたらしい。
夜風がこんなにも泣いているのを初めて知った。
静寂がこんなにも胸に突き刺してくるものと初めて知った。
音楽は知識や数じゃない、心の風鈴。
けたたましい情緒のない滝の流れに押し流されていた僕。
清流のせせらぎに耳を傾ける暇もなく。
揺れる揺れる風鈴が揺れる。
心の奥の余暇を涼むように。