7年ぶりの再会

何にも変わってないと思った。
夜8時、久しぶりの声が電話から聞こえてきた。
「工藤いま何してんの?」
外にいたので折り返し連絡することを約束し切った。
ファミレスにいたのは相も変らぬ三人だった。
渡辺、中村、藤田、約7年ぶりの再開。
12時近くになってしまった電話の声に誘われ行ったらこれだ。
うれし恥ずかしい気持を抱えながら席に着く。
お金がないわけじゃないだろうに各自ドリンクバー1杯。
ニヤニヤしながらお互いの顔を見ていたら三秒で7年前に戻ってしまった。
「今度テレビ出るんだってね」
それぞれの今の仕事、結婚しただの彼女がどうのと話す。
むずがゆい気持はきっと昔の自分がそこに見えるからなんだろう。
あの頃の僕らとなんら変わりない喜びと恥ずかしさが胸を走り回っていた。
帰り、終電もなく僕はクルマでみんなを送った。
「羨ましいよ・・工藤が」
後ろの席から渡辺がボソッと言った。
結婚して籍を入れたばかりの彼は今年建築関係の会社に就職したという。
ヘッドライトが暗闇を照らす。
僕は前を向いたまま答える。
「みんなすごいよ・・」
あの頃の僕達は今こうして夜の道を走ることを想像できたろうか?
一人は歌手の道へ一人は建築家の道へ。
確かにあの頃から伸びている道路をこの車は走っている。
沈黙を破るように僕は言った。
「誇りもてる仕事と死んでもいいと思えるぐらいの人見つけられたら幸せだよね」
今本気で思うこと、そして僕達に大切なことはこれしかなかった。
25歳。
中途半端で、大人にもなりきれない寂しさと不安がオレンジの街灯に揺れている。
手を振って別れた僕達はまるで永遠の別れを惜しむかのように目を見つめた。
「また会おうな」
いつになるかわからぬ約束をして僕達はそれぞれの明日に溶けていった。