カミキリムシ

やることのない日は土手を歩く。
陽射しに溺れてしまいそうな太陽の下
すれ違う犬に道をゆずった。
行く当てもないから公園へ行き
野原を下に居眠りをした。
腕の痛みにビックリしたら
真っ黒なカミキリムシが
駄々をこねるので振り払い
背中の草をはらって起きた。
さっきまでいなかった親子が一組
サッカーボールで遊んでる。
ボンヤリとそんな景色を見ていたら
少しさみしさが近寄った
いるはずのいない人を想った。
横にあの人がいればと願った。
汗ばんだ背中が少し冷たく
一人っきりを残して去った。
どうしてあなたは一人しかいない。
世界にたった一人しかいない。
一度っきりの命を越えて
あなたを想ってるというのに。
空は突き抜けるほどに青く
今日来る夕立のかけらすら見当たらない。
さっき振り払ったカミキリムシも
寂しくてこの腕を噛んだのか。
産まれもっての運命を
ごまかそうと噛んだのか。
僕があの人を想うのと
なんの違いがあるだろう。
「ゴメン」と一言呟いて
日照りの公園を歩いた。