テレビさんへ

テレビさん、あなたを最近見ないのは嫌いになったからじゃないんです。
自分自身を見つめるために少し頭をカラッポにしたいんです。
あなたはけっこう情報通ですよね。
あることないことけっこう教えてくれますよね。
けど何だか最近疲れてしまったんです。
後から編集してくっつけた笑い声も、悪者に仕立て上げる効果音も。
少し本物がほしいんです。
この手で触れる真実はけっこうグロテスクで痛々しい。
生きてる以上白い肌の下には血が流れるんです。
真っ赤な薔薇のような血が。
けどそれは何よりも優しくて何よりも温かい。
家族の食卓、クイズ番組の司会者より両親のお説教を取りたい。
悩める恋愛、ハッピーエンドの映画より苦しい片想いを取りたい。
自分の人生、トレンドのファッションより不器用な生き方を取りたい。
流されやすい僕の性格はあなた向きじゃないのかもしれません。
だから最近いろんなこと考えます。
夜空見ながら好きな子を想います。
見えない未来を日記に連ねます。
そして自分を見つめます。
バカと指さされても「大切なこと」を見つめる純粋がほしい。
安物の情報よりも一握りの愛がほしい。
テレビさんゴメンなさい。
いい時はいいように悪いときは悪いように言う僕は自分勝手で汚いね。
目の前の窓ガラスに蛾がとまっています。
追い払うこともできますがそっとしといてやりましょう。
ほんの短い一生のほんの一瞬のときぐらい羽を休めてもらいましょう。
きっと飛び立てば激しい風に揉まれ地に叩きつけられるかもしれません。
自分自身を見つめる僕と、目の前の白い蛾がどうも重なってしょうがありません。
テレビさん少し休憩よろしいでしょうか?