リトルシンガー

リトルダンサー」という映画を見た。
踊りが好きで好きでしょうがない少年が大人の反対を押しのけバレーを始める物語。
イギリスの景色、お金もない、母親もいない。
あるのは「夢」だけ。
僕はこの映画を見ながらギターを始めた頃の自分を思い出していた。
壁ぞいを歩き、左手の指をコンクリの壁に押し当て歩いた。
弦を押さえる指先を強くしたかったから。
何枚も指の皮が破けて硬くなった。
学校に小さい木のベニアを持ち込み六本の線を鉛筆で書いた。
C,Am,F,G,机の下、コード進行を授業をサボって覚えた。
入りたてのテニス部をやめて女子20人、男1人のコーラス部に入った。
家に帰れば布団をかぶって好きな歌を夜中中大声で歌った。
「夢」なんかじゃない、ただ好きだったんだ。
理由や頭じゃない心が「歌うこと」を求めてた。
あの日の少年が「リトルダンサー」の中にはいた。
最近何か吹っ切れない自分がいる。
先のことを考えた曲作り、綺麗な言葉ばかりが並ぶノート。
「歌、好きなの?」
無垢な瞳が僕を見つめる。
あの日の僕が今の自分を見上げている。
僕はプロになるために歌ってきたわけじゃないだろ。
ただ歌うことが好きで好きでしょうがなくてここに立っているんだろ?
何を恐れているんだ?何を戸惑っているんだ?
もう一度戻ろう、な。
心がさそってるよ。