地下鉄

地下鉄に乗っている。
暗闇を裂く音が聞こえる。
向かえの席に座る男はさっきからメガネをいじっている。
イタリア料理屋のアルバイト、いつもこの電車にゆられていた。
恐かった。
時間が止まっている気がしてまるでタイムマシーンに乗ってるようで、目をつぶるたび歳をとるようで。
僕はどこにゆくのか?
不安は僕の影のように隙間なくついてくる。
燈された明かりは幻想。
地下鉄の外は闇。
眠ったふりをしてる人、雑誌を熱心に読んでる人。
みんな同じ方向へ向かう、何をしてたって同じ方へ向かう。
幸せも不幸せもトンネルの中を走り抜けていく。