ナンパ急行青森行き

東京〜八戸行き、はやて7号。
僕は頬杖をつきながら窓の外、流れる田園風景を見ている。
曇り空の下、立ち上る煙と霞む山々。
あの川に浮かぶ船頭に僕の姿など見えないのだろう。
しかし超スピードで突き進むこの文明の力、感動やいたわりなどないぐらいの高速で人を目的地へと運ぶ。
「旅は過程が大事」
そう信じていた僕。
なんだか寂しい気になってくる。
それにしても隣の女性、さっきからズビズビ鼻をすすっている。
風邪か?いや待てよ、涙も流してないか?
あちゃ‥失恋一人湯煙旅行か?
声でもかけようか、それとも歌ってあげようか。
「どうしたんだい?俺に話してごらん‥」
甘い妄想を乗せ、この列車は晴天の青森を目指すのでありました。