涙の結晶

泣いた泣いた泣いた。
レコーディングとはこんなにも涙が出るものなのか?
意見の衝突や葛藤はある、けれどそんなことよりも新しいものが生まれる感動の方が大きかった。
僕の作った歌が沢山の人の思いに支えられて成長していくのを見ていると、高校の頃初めてギターを握り締めたこと、初めて曲を作った時のことを思い出した。
不器用でやんちゃだった僕の歌達が立派に大人になっていく。
なんだか自分の息子が親離れしていくみたいだった。
「おつかれさまでした」
手渡されたCDには四日間の重みがあった。
涙が溢れた。
「何度も僕は音楽に支えられてきました、こんどは僕の歌で人に元気を与えてあげたいんです」
顔を真っ赤にしながらスタッフと腹をわって話し合った。
僕が伝えたいもの、僕がやりたいもの、僕がどういう歌手になりたいか。
「レコーディングは共同作業なんだよ」
アーティストが納得していなくてもレコーディングの日程は決まっている、進行させなければいけない。
時間に追われながらも僕達は全力で笑い、泣いた。
そして今、僕の手元には2曲入りのたわいもないCDがある。
愛しくてたまらない。
「ありがとうございました」
手を握りあったスタッフ達の間には戦友のような固い絆が生まれていた。
結局どんなに技術やテクノロジーが発達しようと音楽は人の手によって生まれる。
作り手の熱がリスナーに伝わるのだ。
僕達の涙の結晶はいったいどんな人の心に届き響くのだろう。
来年の一月が楽しみだ。