生まれ持っての寂しさ

セミが仰向けになって転がっている。
行き交う車のヘッドライトは影を伸ばしては運び去っていく。
僕は走るのをやめセミを見ている。
何年も土の中にいたのに一夏で息絶えてしまった。
彼は自分の命の短さを知っていたのだろうか?
だからあんなにもけたたましく命を叫んでいたのだろうか?
僕はどうなんだ?
いつ死ぬかわからない毎日をあてもなくさまよっている。
「明日死ぬかもしれない」
こうつぶやけば「そんなことあるわけない」と言い返す自分。
命はいつだって影を落とす光。
暗闇に目を向けぬよう僕達ははしゃぎ続ける。
まるで街頭に集まる虫達のように。
模造の光に吸い寄せられては体をぶつけ地に落ちていく。
みんな夜が怖いんだ。
一人きりになりたくないんだ。
一人きりで生まれ一人きりで死んでいく運命。
生まれ持っての寂しさ。
このセミはいつか風に飛ばされ土にかえるのだろう。
その土の中で息を潜めて待つ来年のセミ達。
命は続く、寂しさを乗せて。