祭りのあと

花火を背にして歩く祭りのあと。
右手のギターケースが手にくいこむ。
僕の影は花火が上がるたび浮き上がりまた消えてしまう。
子供の泣き声、悲鳴、そして歓声。
「川口たたら祭り」のメインイベント、花火が夏を叫んでいる。
野外ライブが終わり僕は疲れきった体を引きずりながら歩いていた。
駐車場から見える屋根に隠れた半分の花火。
僕は急に涙が出そうになる。
花火がけたたましく、そして美しければ美しいほど切ないのだ。
「人は夜空の静けさを埋めたくて花火を打ち上げる」
子供の頃、待ち望んだ夏休みを思い出す。
両親と毎年栃木の田舎へ行くのが習慣だった。
土手に座りながら見る空と川に浮かぶ二つの花火。
隣には母ちゃんと父ちゃんがいて、耳をふさいだ僕を見て笑っていた。
帰り道、僕は両親の手をギュッと握った。
離してしまうと二度と会えなくなるような遠くへ行ってしまいそうな、そんな気持ちになったからだ。
花火の後の静けさがポッカリ空いたブラックホールようで怖かった。
夏の思い出はいつだってどこか切なく蜃気楼のように記憶の奥で漂っている。
「たまやー!」
後ろで誰かが叫んだ。
最後の花火が上がる。
夜空に垂れ下がった大きな花火。
それはまるで枝垂桜のように宇宙の孤独を一瞬照らし散っていった。