半月

ずいぶん静かな夜だ。
ライブの練習の帰り道、車の中から大きな半月を見つけた。
真っ暗な闇の中、一人さびしそうにポツンと浮かんでいた。
坂道が多く、まるで月に向かってドライブしてるみたいだった。
信号が赤に変わる。
ハンドルを握ったまま空を見た。
「別れよ」
いつかの失恋の場面。
あの日もこんな月が浮かぶ静かな夜だった。
車の中時計の針の音だけが沈黙を埋めた。
世界の片隅に二人っきりでいる気がした。
恋の終わり。
信号が青に変わる。
アクセルをゆっくり踏み込み息を吸い込んだ。
今、もう一度あの時に戻っても同じように黙ってしまうだろうか?
はっきり言えることがある。
「時に愛は、嫉妬や束縛に変わりお互いの気持ちを見えなくさせてしまうことがある」
半月の半分は地球の影。