汗まみれの青年

昨日は栃木の「サウンドシャワー街角音楽祭」に参加した。
花粉に鼻がムズムズしたが、青い空と桜吹雪の手助けもあり、無事コンサートは成功した。
新曲「Message」を歌った直後、枯れていた公園の噴水が勢い良く水を出し始めたのには驚いた。
スタッフが粋な計らいをしてくれたのだ。
「コンサートは一人の力では完成しない」
僕は以前コンサートスタッフのアルバイトをやっていたことがある。
コンサートの時スーツを着た人達が立っているが、まさにあれだ。
彼らは舞台の組み立てからチケットもぎり、お客さんの整列、商品販売、チラシ配布、そして舞台をバラすところまですべて任される。
「無料でプロのコンサートが見れる♪」と気楽にはじめたアルバイト、しかし現実はそう甘くなかった。
早朝6時現場に集合。
パンチパーマのおっさんに怒鳴られながら照明を吊るす重い骨組みを運ぶ。
指がちぎれそうになりながらスピーカー類を運ぶ。
弁当を食う暇もなくチラシを折り込む。
「あわてないでくださーい!」
せっかちなお客さんを拡声器で注意する。
ようやくコンサートが始まる。
会場内に入れると思いきや、新人は廊下警備担当だということを知る。
次の日、運良く会場内担当になるが、「邪魔なんだよ!」と客にむなぐらをつかまれる。
スーツのボタンが一つ外れる。
コンサートが終わり、ぐったりした気分で舞台のバラしに入る。
「気をつけろよバカ!」パンチパーマのおっさんにまた怒鳴られる。
「主役はスポットライト、俺達は街頭の明かりだな」
仲間達と半分投げやりに笑う。
「そこ!サボってんじゃねーぞ!」
夜中12時に積み込みを終えアルバイト終了。
終電ギリギリに駆け込み、着替える気力も無く布団に倒れこむ。
「何やってんだろ俺・・」
いつの間にか眠ってしまい、次の日遅刻。
そんなこんなで僕はそのアルバイトを約1年続けた。
「コンサートは一人の力では完成しない」
本当にそう思う。
しかし、いざ舞台に立つとスタッフに感謝する余裕もない自分がいる。
自分のことで精一杯なのだ。
あの日僕は思った。
「感謝の心を忘れない歌手になろう」
わかってる。
けど、今の僕は本当にそれができているか?
舞台があって当然だと思ってないか?
お客さんがいて当然だと思ってないか?
暗闇のコンサート会場、汗まみれの青年がじっと僕を見つめている。