元気になるコーヒー

「茶色の小びん」で明日ライブだ。
茶店のママが本当にいい方で、会ったとたんファンになってしまった。
ママは学校の給食センターで元々働いていたらしく、茶色の小びんのカレーはどこか懐かしい味がする。
「夢ってね持ち続けてると叶うものよ」
茶店の奥には色とりどりのティーカップがずらりと並んでいる。
「いつか喫茶店開こうと思ってたから、いいティーカップがあったら買い続けてたの」
僕がコーヒーを注文すると真っ赤なティーカップが出てきた。
「お客さんの個性によって色や形を使い分けしてるのよ」
「俺って情熱的ってことっすか!?」
夢ってマジックのように突然叶うものじゃない。
ゆっくりゆっくり暖めて初めて形になっていくものだ。
「マイペースにじっくりいきましょう♪」
肩を並べたティーカップが笑いながらそう言ってるみたいだった。
ママは静かに僕の話を聞いてくれた。
夢のこと日々のこと出会いのこと。
僕はすっかり茶色の小びんのトリコになってしまった。
帰る時さびしい気さえした。
夕暮れ時の少年のようなさびしさだった。
「また来てね」
ママは静かに手を振ってくれた。
なんだか思いっきり深呼吸したかった。
「やるぞ〜!」
何をやるでもないのにやる気が出てきた。
本当にいいお店ってやつは人に美味しいものを提供するだけでなく元気までくれる。
茶色の小びんはそんな店だ。
歌手もそうかもしれない・・
歌が上手い奴は山ほどいるけど、元気を与えてくれる歌手って少ないもんな。
「本物の歌手になるぞ〜!」
そう思い家路につくシンちゃんでありました。