雪の下の花

「こーゆーことが大事なんだぞ慎太郎」
打ち上げで峰岸さんは言った。
70人のお客さんが狭いスペースにぎっしり座り、僕の歌を聴いていた。
笑顔の人、じっとみつめる人、目を閉じている人。
この中には家をなくした人もいるんだろう。
愛する人をなくした人もいるんだろう。
一生癒えない傷を抱えた人もいるんだろう。
けれど今、みんなが肩を寄せ体を揺らしながら僕の歌を聴いている。
いいコンサートだった。
サイン会では僕の手をギュッと握り、
「頑張ってテレビ出てよー」と応援してくれる人がいた。
僕のほうが元気をもらった気がした。
「九州で震度6地震発生!」
突然だった、コンサートの数時間前にテレビでリポーターが叫んでいた。
それを黙って見つめる新潟の人々。
彼らにはどんな風に九州の地震は映ったのだろうか。
静かに悲しい顔をしていたのを覚えている。
人は希望を捨てない生き物だ。
また一から歩き出す勇気を持っている。
どんなひどい目にあってもユーモアを忘れない。
そして悲しみを知れば知るほど優しくなっていく。
人間ってすごい。
僕はこれからどんな歌をうたっていけばいい?
どんな風に生きていけばいい?
きっとこの新潟のコンサートが答えを知っているんだろう。