変身

渋谷、代官山、行ったこともない裏道を歩く。
案内された店はどれもこだわりの服が並んでいた。
かっちょいい革靴で鏡に向かってポーズ。
気に入ったTシャツを胸にあてがってはポーズ。
今回の衣装探しは僕の新しい感性を突っついてしかたない。
それもそのはず、案内してくれた人はなんと洋服店の店長を10年も勤めた人。
僕の行ったことも、いや目にしていたけど入らなかったよな店を指差す。
「洋服も歌と一緒で表現の一つだと思う」
8月から入った僕のニューマネージャー。
早速一緒に買い物に出かけた。
まず読んだこともない本を手にとって僕に渡した。
「この本読んで人生が変わったよ」
変身願望が服を着て歩いてるような僕が飛びつかないわけがない。
深夜特急」という題のその本は世界中をバスで旅した若者の話。
まだ読んでいる途中だが止まらなくなりそな予感。
それにしても心強い、洋服を選んでいても鬼に金棒の気持になる。
気弱なのは財布の中身だけ。
今日のとこは気に入った赤のシャツ一枚ゲット。
店を出たとき何だか違う自分になれたようで嬉しかった。
ジャングルに行ってトラと戦ったり、北極に行って白熊と戦ったり。
ものすごいことやるよりも新しい人と出会うことの方が僕は変われる気がする。
無限の知らない自分が「見つけてほしい」と呼んでいる。
音楽だって隠れた音符達がアッカンベーして身を潜めてるのかもしれない。
少しずつ、まるで耳かきをするようにそんな世界を知ってきたい。
人は人で変わる、そう思う。