運命の人

僕は幸せものだ。
今日、憧れであり尊敬していた女性歌手の方とお会いすることができた。
「慎太郎くん」
「あっはじめまして」
初めての会話はこんなものだった。
しかし僕の心の中ではとんでもない地震が起こっていた。
マグニチュード100!!!
頭が爆発し、体の穴という穴から溶岩が流れ出しそうだった。
「夢のよう」とはこのことをいうのだろう。
鼻の穴の溶岩が止まらないうちに、彼女は追い討ちをかけてこう言った。
「慎太郎くんの声は心に響くものよね」
うひゃー!嬉しすぎる。
いったいこの世に「心に響く声」を持つ歌手は何人いるだろう?
指折り数えるぐらいしかいない。
しかしその少ない歌手の中の一人が目の前にいて、しかも僕に「あなたの声は心に響く」と言ってくれたのだ。
鼻から溶岩どこの話じゃない。
僕達は10分ほど話し、帰り際「一緒に頑張ろうね」と彼女は握手してくれた。
「よろしくお願いします」
僕はその時、彼女に恋している自分に気付いた。
「もう少し話したい」
「また会えるかな」
胸は高鳴り地に足が着いていない。
彼女の面影が別かれた後もチラついて離れないのだ。
「恋しちゃった・・テヘッ」
あんなにも全てを預けてもいいと思った人はいない。
あんなにも全て信じられると思った人はいない。
「歌は心よ」
彼女が会話の中で言った一言。
「歌は心だ」
僕が昨日のライブで言った一言。
運命を感じずにはいられない。