再出発

暗闇の中続く街灯のオレンジ。
僕の影は何度も車に踏まれ猫背になっていく。
「さぁ休憩は終わりだ」
荒川大橋を渡りゆっくり土手沿いを走った。
額の汗をTシャツの袖で拭いながら雲に隠れた月を探す。
足は自然に一歩一歩前へ進む、腕もそれにつられてリズムを刻む。
サボっていた体が疲れを欲しがっている。
「もっと走れ!ボロボロになるまで俺を疲れさせろ!」
先週、僕の腹が急に痛みだした。
病院へ行き、せっかくのゴールデンウィークも布団の中で過ごした。
ずっとゴロゴロしていると人間、脳みそが腐る。
完全に僕のスイッチはOFFになってしまい、人と係わることすら面倒くさくなってしまった。
暇だった。
僕は自転車にまたがりビデオレンタル屋に向かった。
ビデオを6本借りた。
帰り道、子供の頃通った駄菓子屋の横を通った。
シャッターを下ろすおやじが見えた。
僕は目をそらした。
テレビに映しだされる数々のストーリー、牛乳を飲んだり寝っころがったり。
人の人生をわかったふりして、涙したり笑ったり。
「バッカみたい・・」
僕は暗闇の中を走る。
遠くに見えるヘッドライトの波を目指して。
体が熱を持ち、背中の汗がひんやり冷たい。
まったく星が見えない空、しかし曇り空もよしとできる自分がいる。
「気持いぃ!!」
人はいい時も悪い時もある。
光に当たってばかりだと、闇にうもれたくなる時もある。
果てしなく続く道のり、山あり谷ありだ。
ゆっくりやっていこうかと思う。