素顔

「星ってこんなにあったんだなぁ」
大きな石にねっころがってつぶやく。
一定のリズムで回る堤防の光が、水平線のかなたに消えていく。
波の音と静寂。
明日行われるコンサートの為、いち早く乗り込んだ沖縄。
行きに着てきた長袖はトランクの奥底にしまいこみ、半袖を探す。
噂には聞いていたが、まだ沖縄は暑かった。
セミが鳴いてら」
ホテルのベランダから見た夕日があまりにもすごくて外に出た。
日が沈むまで海を見た。
バナナのような上弦の月、その海に延びる光の絨毯。
僕は仰向けになって星を見た。
プラネタリュームなんて目じゃない、おもわず満点の星に手をのばす。
都会の夜空にもこれと同じ数の星が隠れている。
街灯やネオンの明るさに目がくらんで見えていないだけ、僕達は損してる。
「お化粧を落とした方が綺麗なのに」
けっこういるんだよなぁ、都会の空のような女性。
そして人のこと言えない僕の素顔。